Artist Series × Flower

【MIZUBASHO Artist Series×Flower】
グラスで生け花レッスン〜暮らしを彩る3つの和の方法

石草流家元後継 奥平清祥さん

本日のレッスンは、石草流家元後継の奥平清祥さんです。ホテルオークラの玄関を入ると数メートルもの長さにわたって飾られている壮大な生け花を、1962年の開館当初から担当してきたのが石草流。石草流家元の家系に生まれ、幼い頃から本物をみてきた清祥さんに、『MIZUBASHO Artist Series』3種類に合う生け花のレッスンをお願いしました。

生け花というとちょっと難しそうですが、今回のレッスンでは、ご自宅にあるグラスを使い、身近な花屋で手に入る花々を使っていますので、誰でも気軽に試せるものとなっています。
簡単なのに清祥さんのマジックにかかるとテーブルが一気に華やぐんですよ。
和のおもてなしの秘訣を教えていただきましょう。

【Lesson1 スパークリングに合う花の生け方】

本日はご自宅にあるもの、お花屋さんで手軽に手に入るもの、それらを使って和のおもてなしをお花でどう彩るかをご紹介したいと思います。

《下準備 キッチンばさみでOK!》
お花を生けるときは、花を生ける専用のハサミがなくても構いません。自宅にあるキッチンばさみで十分です。

《その①フルートグラスに生ける》
それではスパークリング用のフルートグラスへの生け方から始めたいと思います。

1.グリーンを使って背中を支える
まず初めに、背中を支えてもらう役割としてグリーンを挿していきます。お水は少し入っていれば十分です。茎も下までついていなくても大丈夫。ちょっとした集まりや、パーティーの間だけであればお花は十分持ちます。

2.グラスの首に花をひっかける
メインの花は一番綺麗なところを、一番よく見てもらえるようにグラスの首のところにひっかけます。

3.後からグリーンを足していく
花を挿した後からグリーンを少し足してみます。

この時、まっすぐに入れるとストンと落ちてしまうので、折りだめという方法を使います。茎の部分をポキッと折れないようにゆっくりじわじわっと曲げていただいて、グリーンにひっかける形でとめると納まってくれます。

Point 折だめをつくると納まりやすい

《その②ボウル型の器に生ける》
それではご自宅に必ずあるボウル型の器にどう生けるかをやってみます。

1. ボウル型の器を2つ重ね、隙間に花を挿す
大小のボウルを重ねることで隙間ができます。この隙間にお水を入れていただいてお花を挿すと、とても素敵な生け方になります。

2.中央の器にはお菓子や葉っぱを入れる
真ん中の空いたところにお菓子を盛ったり、あとは使わなかった緑色の葉っぱだけをいれてみたりすると、とても素敵なキャンバスになります。

引き算が大事。これもいっぱいいっぱい詰め込みすぎないで、どこで十分だろうか、どこくらいでとめておくと上品だろうかということを考えながらやります。

Point いっぱい詰め込みすぎない

和の方法 ①引き算

和の方法、ひとつめのポイントが「引き算」というやり方です。
日本の方法では、なるべくその良さを引き出すために最小限のところまで引き、無駄なことを取り除くことで美しさを引き立たせます。

【Lesson2 スティル酒に合う花の生け方】

《下準備 和紙の端切れを用意する》
和紙の四隅をずらして半分に折り、おぼんの代わりに使います。

簡単に和のテイストを入れたい場合は、こういう和紙の端切れが便利です。端切れは200円弱くらいで売っています。四隅をちょっとずらして半分に折っていただくと、おぼんがない場合も手軽に和風なおぼん風なものを用意できます。

《その①ワイングラスに生ける》
ワイングラスにどのように生けるのかお伝えします。

1.グラスに少し水を入れて中に葉っぱや花を沈める
ワイングラスはどうしても、ずんぐりとした形が多く、フルートグラスのように背が高くありません。そんな時はお水を少しだけ入れ、この中にお花を沈めてしまう方法があります。

こちらもいらないと思った葉や花は取り除きましょう。なるべくLess is Moreで極限まで省いていくと美しさが出てくるのが、日本の美の面白さでもあります。

Point 花についている葉は最小限にする

《その②平皿に生ける》
次にこういう平らなお皿ですね。一般的なご家庭によくある真っ平らなお皿も、いろいろな形がありますが、これにお花を生けてみようと思います。

1.花いかだをつくる
この平たいお皿に活けるやり方としては、花いかだというやり方があります。

枝や葉を組み合わせて輪ゴムや糸などで束ねます。綺麗だと思えるものをなんでも組み合わせていただいて、花を浮かべる土台を作っていきます。決まりはありません。手を離しても大丈夫な状態にしていただき、いかだを作ります。置き方は縦横どちらでもけっこうです。

2.作ったいかだに花を挿していく
このいかだに花を挿していきます。先ほどつけたで輪ゴムのところにただ通すだけです。

和の方法 ②余白

二つめの和の方法は「余白」。

一つ目で引き算をしたときに極限まで絞りこむと、大きく真っ白なところや、何も入っていない余白が見えてきます。日本人の美術というのは、その余白の美しさをたくさん利用してきました。
ご自宅でも、すべてを埋め尽くすのではなく、わざと余白をとっておく花の楽しみ方をぜひ試してみてください。

【Lesson3 デザート酒に合う花の生け方】

《下準備 便箋や絵葉書を用意する》
みんなが知っている絵の世界観を用います。
ご自宅にたくさん買ったけど、もうつかわなくなった筆記用具や便箋、絵葉書などがあると思います。みんなが知っている絵を飾ってあげることで、その世界観を引っ張ってきてあげるという方法。実はこれが和の心の楽しみ方でもあります。

《その①小ぶりなグラスに生ける》
小さいグラスは、もともと中に入る量が少ない上に、グラスから上に出る分も少ないため、小ささを逆に生かします。

1.大き目の葉っぱを中に入れる
例えば大きい葉っぱ、これを中に入れてしまいましょう。

2.花を葉っぱの間に入れて挿していく
そして花選びです。いろんな花の大きさがありますが、小ぶりのグラスで長めに使いたい時は、なるべく華奢なものを選ぶとバランスがとりやすくなります。

Point長さのある花を使う場合は華奢なものを選ぶ

何枚か入れた葉の間に茎を挿し込むと花をとめることもできます。デザートで召し上がるお酒のイメージなので、可愛らしさもありつつ、ちょっと大人らしい雰囲気のほうがいいかもしれませんね。
視点が一点に集まるので、反対側に同じように目線を引っ張るグリーンや花を入れてあげるとバランスが取れます。

Point 目線を引っ張る方向の反対側にも生ける

《その②コップに生ける》
ご自宅にあるコップでのお花の生け方です。今回は便箋や画用紙を風景として使ってみようと思います。

《下準備 画用紙や便箋、絵葉書を使う》
まずコップに便箋や画用紙などを入れます。そのコップに、いただいてきたり集めたポストカードを立てかけてみましょう。お家の中に掛け軸をかける場所はないけれども。美術空間や小さな祭壇を作る感覚を持っていただけるといいかもしれません。

1.土台になる葉をグラスに沈める
土台に使う葉もあまり大きくせず、枝や葉を中に沈めるとすっすと止まってくれます。

2.同系色の花を入れていく
同系色の花を、土台の葉に挿していきます。「うまくいかなかったらどうしよう」と思わずに、どんどんご自身で楽しむようにやっていただければ。

和の方法 ③みたてる

ここでご紹介したのは3つめの和の方法「みたてる」です。

三角形や丸をお家の中で使うことにより、太陽や月、富士山などの雄大な自然を、自分の手元に引き寄せようというのが日本人の発想です。みなさんもぜひ「みたてる」「なぞらえる」を使い、いろんなものを引っ張ってくる面白さを味わってみてください。すべてをここに表現しようとせず、世界観を借りる気持ちでやってみるといいかもしれません。

【MIZUBASHO 公認ミューズ プロフィール紹介】

奥平清祥
石草流家元後継
華道家

幼少より慣れ親しんだいけばなの道に進み、ホテルオークラ東京、
アマン東京、サニーヒルズ東京などの館内装花を担当。
ホテルオークラを飾るために立ち上げられた石草流いけばなで、
国内外のお客様やVIPをおもてなしする精神とかたちを学び、
家元である母の助手と新人の育成にあたる。
日本農業経営大学校で非常勤講師を勤め、食と農と文化を軸に
生活者の心理と需要を探るため多面的多層的なマーケティングと
営業支援を教授。
和洋混合のスタイルとリズムになった現代の生活やビジネスに、
自然やアートでいかに潤いと彩りを取り入れられるかを
研究・提案。
分野を横断連携して、日本文化の継承と次世代への訴求を図る
活動・ネットワーク形成に努めている。