Artist Series × Flower

【Flower×日本酒】奥平清祥インタビュー【MIZUBASHO Artist Series】

華道家
石草流家元後継
奥平清祥さん

(インタビュアー)
永井酒造株式会社
ディレクター永井松美

ホテルオークラのエントランスに一歩踏み込むと、まるで山の自然をギュッと閉じ込めたような壮大なスケールの生け花の存在感に圧倒されます。時には大きな木々が岩に囲まれて生い茂っていたり、時には館内に作られた池の中に花が咲き誇っていたり、または花器や小物遣いで遊び心にあふれていたり。常識の枠をはるかに越えたその生け花は、わたしたちが知っている華道とは一線を画しています。

今回は、ホテルオークラ創業当初から60年に渡り玄関を飾りつづけている石草流、その家元後継でいらっしゃる華道家奥平清祥さんにお話を伺いました。『MIZUBASHO Artist Series×Flower』のレッスンでも見せていただいた、艶やかでありながら、そっと日常に寄り添う生け花の原点をお聞きしています。

【OLから一転、華道家家元の母へ入門】

永井松美(以下M)「本日は華道家の奥平祥子さんをお迎えしております。祥子さん、よろしくお願いします」

奥平清祥さん(以下、O)「よろしくお願いいたします」

M「いつも会う度に素敵なお着物をお召しで、着付けも教えてらっしゃるんですよね?」

O「参加されている皆さんと楽しく、毎日着物を着られるようにするためのコツをお教えしています」

M「楽しく毎日着られるというのは大事ですよね。今、日本酒もそうですけど、着物も華道のお花もどんどん日常から離れていってしまっていて」

O「そうなんです」

M「ところで祥子さんはこの数年の間に華道の活動を始められたとか。その前はOLをやってらっしゃったんですよね?」

O「はい。母が『花をやるのだったら、花だけやっていてもダメだ、普通にきちんと仕事をしなさい』という方針だったため、普通に就職活動し、受かったところに採用していただいていました。社会人になってお給料をいただき、そのお金で初めて、親孝行というわけでもありませんが母のところに入門したんです。そこから初めて花を習い始めました。
それまでは、家でただ家族団欒の一環として花をちょこちょこ生けて遊んでいたんですけど、きちんと流儀を学ぶというのは社会人になってからのことです」

M「華道にもいろいろな流派がある中で、ホテルオークラは石草流とうかがいました。石草流とは、ほかの華道と比べてどのような特徴がありますか?」

O「石草流とは『石』と『草』と書きます。『石』というのは永遠に姿が変わらないものの象徴で、『草』は時事刻々と変化していくものという。その陰と陽が自然のすべての組み合わせに入っているというのが石草流の考え方です。それぞれの対比と調和というものを、花の世界に模して切り取ってくることで、山だったり川だったり、自然の雄大な美しさを屋内に再現しようというものが石草流という流派になります」

M「ある意味、日本の文化というか。西洋の美とはまた違ったところにありますよね」

O「そうですね」

【子どもたちに学んでほしいこと】

M「(華道の親子講座について)子どもたちには華道を通して、どんなことを学んでいってほしいと思っていらっしゃいますか?」

O「お子さんに限らずではあるんですけれども、特にお子さんに感じ取っていただきたいのは、肯定力なんです。花はすでに完成されていて美しい存在ですから、自分たちはいかに手をくだしても失敗するということがありえなくて。そのお花の美しさを見いだせた自分がすごいんだよ、ということに気づいてほしいというのがまず一番なんですね」

M「面白いですね!」

O「その思いを今度は花の技術と一緒にのばし、自信を持てたことを周りのみんなが認めてあげる。そういうことをお子さんができるようになってくると、まず自分で自分を肯定できますし、同時に人を肯定する力がついてきます。それは花がくれる最大のギフトだと思っています。純粋に花を楽しむということを、ぜひお子さんにやっていただきたいですね」

【女性も男性も一緒に日本酒を楽しんでほしい】

M「祥子さんの今日のレッスンを拝見したときに、とてもお花が身近にあるなと、そして日常生活のなかにそっと入り込んでくるのを目指していらっしゃるのかな?なんて思いました」

M「普段日本酒は飲まれますか?」

O「好きで、日本酒を一番飲みます」

M「本当ですか!『MIZUBASHO Artist Series』を初めて飲んだ時はどんな印象でしたか?」

O「(『MIZUBASHO Artist Series』3種類は)それぞれスタイルが違い、風合いも違って、さらにいろんなものと組み合わせができるという。これだけスタイリッシュで、お手軽で、生活のなかに取り入れられるという日本酒は本当に女性向きですし、女性と一緒に楽しめるという意味では、男性もどんどんこれを飲んでいただけたらと思います」

M「すごく嬉しいです。従来の水芭蕉は高級路線で来ていたので、うちにとってもこれは初めてチャレンジしたカジュアルな商品なのです。「安い=おいしくない」というイメージがつきやすいのですが、安くても本当においしいお酒を目指しているので、いただいたお言葉は本当に嬉しく思います」

M「この『MIZUBASHO Artist Series』をどんな時に飲みたいなと思いますか?」

O「お酒を飲もうと集まったのではない時にも、さらっと出して、さらっと楽しめるのではないでしょうか。そういう(気軽な場面に)とても向いているうえに、その時に与える印象がすごく強いですね」

M「そう言っていただけると本当に嬉しいです。今回は本当に水芭蕉の公認ミューズを快く引き受けていただき感謝します。本日はありがとうございました」

O「ありがとうございました」

【Voice of Kuramoto〜蔵元の声】

私どもの酒蔵の仕込み水は、上州の山々からいただいた水を使っています。
すべての酒に共通して言えるのは、その自然に育まれた水が、人間に喩えれば背骨にあたる美味しさの軸となる味わいを表現しているということ。どの酒も、口に含むと水の柔らかさと、最後に優しい甘さがふっと浮き出てくるように作っています。
酒造りのコンセプトで一番大事にしていることは、川場村の自然美を凝縮させて酒に表現すること。きれいな酒造りというものをわたしどもは目指しております。

【プロフィール紹介】
華道家
石草流家元後継
奥平清祥

幼少より慣れ親しんだいけばなの道に進み、ホテルオークラ東京、アマン東京、サニーヒルズ東京などの館内装花を担当。
ホテルオークラを飾るために立ち上げられた石草流いけばなで、国内外のお客様やVIPをおもてなしする精神とかたちを学び、家元である母の助手と新人の育成にあたる。
日本農業経営大学校で非常勤講師を勤め、食と農と文化を軸に生活者の心理と需要を探るため多面的多層的なマーケティングと営業支援を教授。
和洋混合のスタイルとリズムになった現代の生活やビジネスに、自然やアートでいかに潤いと彩りを取り入れられるかを研究・提案。
分野を横断連携して、日本文化の継承と次世代への訴求を図る活動・ネットワーク形成に努めている。

永井酒造株式会社
マダム&ディレクター
永井松美

米国インディアナ州政府商務部、シアトル・ワシントン州観光事務所に勤務後、13年間米国に住み、シアトルのパイクプレース・マーケットやベルタウンにてFood & Wineツアーを企画運営するシアトル・フード・ツアーズを設立。
世界最大のワイン教育機関、国際資格WSETアドバンスクラスを学び、ナパやニューヨークを中心にアメリカのワイナリーVIP視察ツアー、企業視察を企画、運営。唎酒師、国際唎酒師を取得し、現在、永井酒造のマダムとして、海外統括、PR &マーケティングにも従事している。
日本酒をミシュラン・レストランにトップセールスで紹介し、日本の酒文化を世界へ発信中